映画 けいおん!

友達に誘われて初日に見てきた(すごいファンみたいで恥ずかしい!)、映画 けいおん!の話である。
初日ということで、気合の入った方々でゴッタ返しているのではないかと危惧していたが、さすが静岡(なのか?)、そこまで混んでいなかった。
客層は、小学生から大きな気合の入った方まで実に多彩。
特に、中学生ぐらいの女の子が結構いたのには驚いた。
けいおん!が女子中高生にも人気があるというのは都市伝説ではなかったんだな。


肝心な内容の方であるが、良くも悪くも、テレビ版の延長線上という感じ。
映画になるのだから、「こう、スケールをデカくして、カッコよくババーンと派手な感じで!」と気負ってしまうのが普通である。
しかし、さすが山田尚子監督、そんなこと関係なしに、TV版のゆったりまったりな雰囲気をそのままフイルム化している。
好きなテレビ作品が映画化すると、尺が短い割に内容を詰め込みすぎて違和感を感じることも少なくないが、本作品ではそんなことはない。
あくまで、ゆったり放課後に部室でお茶を楽しんでいる雰囲気でロンドンにいるだけなのである(本作はアニメ作品では長めの110分程度)。
・・・というわけで、逆に、特にロンドンに行く必要はなかった。
そして、これは映画でなくても、4話くらいにわけてOVAにしても良かった。
映画ということで、気合を入れて見に行くと肩透かしを喰らってしまう。


シナリオはというと、数々のご都合主義が猛烈に鼻につくものの、最後のまとめ上げ方はうまい。
アニメ版では、中野梓竹達彩奈視点で卒業式までの終盤が綴られていくが、今回の映画版では、卒業する四人視点(とくに平沢唯豊崎愛生)で物語が進行していく。アニメ版と対比することで、より話に深みが増していくのである。
というわけで、一見さんには全くお勧めできない。


カメラワーク・画面作りは「映画」を少し意識した形跡があった。
被写界深度が浅い感じで映画っぽさが演出されていたと思う。
原画・動画に関して、派手さはないもののいつもの「けいおん!」らしいしっかりしたものが提供されていて問題なし。
キャラクターの仕草・芝居も大変丁寧で好感がもてる。



テレビよりちょっと長い時間楽しめる「けいおん!!」を見に行くと考えると大満足の映画。


作品中、唯は曲を作ろうとする。
ロンドンに来ているということもあってカッコよくグローバルにと気合い十分。
しかし、なかなか進まない。
結局は最後に、気負わないで等身大の自分の気持ちを素直に曲にしようとするのである。


これは、この映画を作っているスタッフにとっても全く同じだったのでないだろうか。
映画だし、気合入れたいけど・・・・・・・よく考えるとそんなこと誰も望んでないよな。
今までと同じように堅実に作品作ろう・・・そんな風にある意味吹っ切れている作品だと感じた。


もちろん、新OPEDやロンドンが舞台という映画的な目玉もあるのだが、作品の本質はそこにはない。
あくまでTV版に準拠した、TV版のオプションとしての作品。
見るのは1回でいい。24回なんて見なくていい。


おそらく、この作品を24回見て欲しいなんて、スタッフの誰も思っていないだろう。