ARIA THE ANIMATION

tama-akari

ふんわか、はんなり。
ARIA THE ANIMATIONはこんな形容詞がぴったりの作品だった。
近年このような「癒し系」アニメがどのクールにも一つは存在しているが、今期その流れを汲んでいたのがこの作品。毎週、ぼーっとしながら温かい気持ちで視聴させてもらった。


この作品の良さは吉田玲子と藤咲あゆなによる脚本にある。
けして派手さはないものの、主人公の水無灯里葉月絵理乃の視点を通して物語をつづり、日常で何気なく感じたり考えたりしたことを丁寧に掘り下げていたからこそ、毎回視聴者をほんわかあったかい気持ちにすることができたのだろう。
また、物語にぴったりの音楽もそのほんわかムードをおおいに盛り上げていた。Choro Clubのけして自己主張することのないゆったりとしたBGMのおかげで、作品の雰囲気そのものが形成されていたとも言えるだろう。
作画に関しては、原画は平均すると可もなく不可もなく普通の出来で、動画は普通以下。この作品を見ていて「いいなぁすごいなぁ」と唸らされた動画はほんの一部しかなかった。他の作品に比べても予算が限られていたように感じられた。


このように三つの角度でこの作品を評価すると気付くことがある。
そう、この作品は「アニメ」である必要が無かった・・・というのは極端だが、ラジオドラマでも十分面白かったはずだ。


一般論として、素晴らしいラジオドラマがあったとしてそれに絵がつくとどのような影響が出てくるのか?いい画がつけばそれは一段と素晴らしい映像作品になるだろう。しかし、「おもしろ画」がついたらどうなるのか?そう、それはもともとあったはずの「素晴らしいラジオドラマ」以下のものに成り下がってしまう。画を加えたはずなのに・・・画全体が蛇足となり、作品全体を台無しにしてしまうのだ。
近年そのような作品も多く見受けられる。最近作画がおかしいためにおもしろ作品になってしまうアニメが少なくない。涼風は脚本はそこまでおかしくなかったのだが、作画がヤバかったためにおもしろアニメになってしまった。奥さまは魔法少女でもシリアスシーンで大人の主人公が魔法少女の格好をしているのでその説得力を完璧に失ってしまった。


よって、限られた予算の中で「いいラジオドラマ」を「いいアニメ」にするには、できるだけ動画枚数を省き破綻していない最低限レベル以上の原画を描きつづけることが重要になってくるのだ。


ARIA THE ANIMATIONという作品においてはこれが忠実に守られていたといって良いだろう。
そのための工夫として挙げられるのが、動画枚数を稼ぐために引き絵を有効に使用していたこと。
作品中で重要な役割を果たすゴンドラ(要するに船)であるが、主人公達がそれに乗っているシーンでは背景をただただ横に引くだけでシーンを成立させていた。構図がしっかりしていたので視聴者を飽きさせることは無いし、そこでなされるキャラクター同士の話によって脚本に深みもでていた。極端なことをいえば絵を2枚描いただけで何十秒も間を持たせることができたわけだ。
キャラクターをよくデフォルメしていたのもうまい省エネの仕方だ。滑らかに動かそうとせず、逆にパラパラマンガっぽい動きにすることでコミカルさを演出することが出来た。そこでキャラクターの性格を掘り下げることができたと言って良いだろう。


このようにこの作品は低予算の中(推測)で工夫に工夫を加え、最大限の結果を残すことができた成功例である。コストパフォーマンスの非常に高い作品となった。さすが佐藤順一


見ていてあったかい気持ちになりました。スタッフの皆さんありがとうございました!
第二期も大期待。