The SoulTaker〜魂狩〜

tama-komugichan

僕は「ナースウィッチ小麦ちゃん マジカルて」の方を先に知っていたので、元の話がこんなにシリアス(?)だったとは驚いた。


「自分の母親に殺された」記憶を持つ主人公、伊達京介@斎賀みつき。彼はその悲しい記憶に新たな答えを見出すべく旅を始める。その過程で自分の出生、妹の存在、そのフリッカーについての秘密が解き明かされていく。


話の筋は非常に難解であったがよく練られていた。最終回近くでは全ての謎が一応の決着をみたので、その点では成功したといえるだろう。
ただ、ラストに関してはやや曖昧でスッキリしなかったことも事実。ありがちな着地点に落ち着いた感も否めなかった。途中、あれだけ練った構想があったのだからもう一歩つっこんだラストでも良かったかもしれない。しかし、まぁ十分素晴らしい脚本だったと言えるだろう。


声優陣については、斎賀みつき小野坂昌也桃井はるこ大谷育江平松晶子高山みなみ根谷美智子と非常に実力のある人ばかりで聞いていて非常におもしろい。また、ゲストとして田村ゆかり榎本温子浅野真澄なども出演しおたくも大満足だった。その辺もこむぎちゃんのキャラクターやデザインからも分かるとおりそつがない。更には基本的に戦闘アニメといった要素が大きい作品なので普通に熱い。拳と拳で語り合う、そんな展開が好きなおたくへもきちんとアピールできていただろう。



しかし、このThe SoulTaker〜魂狩〜という作品で、もっとも注目すべき点はやはりその「映像」。実験的な意味合いも含めて素晴らしい完成度の映像を見せてくれた。
まず、オープニングがめちゃくちゃカッコイイ。JAM Projectの熱い歌声に乗って流れる斬新な映像はアニメ史に残る完成度を誇っているといっても過言ではないだろう。スピード感があり、しかも作画もいい。京介が飛び出していくシーンなどは技術的にも非常に難しい作画だろうにきちんと成功している。一見の価値有りだ。


話全編通してもそれは同じ。原色を基本としたカウボーイビバップのオープニングのような色使いを多用しカッコよく見せていると同時に、色数を減らすことで塗りの手間を省いていた。今回この挿絵を描いてみてわかったのだが、やはりこういう彩色は塗るのが非常に楽だ。こういう工夫があったからこそ最後までなんとか作画のレベルも持ちこたえたのではないだろうか。
さらに構図としても面白いものが多く、下手に動かすよりも見ていて飽きることがなかった。絵コンテを切っている人間が、視聴者の視線がどこに向いているのか「画面の中央なのか右上なのか左下なのか」常に気を配っている様子が伺えた。
最低限の手間のかからない動画で視聴者を飽きさせないような工夫も随所に見られた。奥行きを感じさせる構図を用いて、近い位置ででボカした歯車をまわしたりと、単純な幾何学的図形でも組み合わせれば非常に興味を引く素材となりうることを証明してくれた。作品中に何度も登場するステンドグラスもそれを象徴したものだったといえるだろう。


監督は新房昭之。この人は最近の「ぱにぽにだっしゅ!」を見ても分かるようにまだきっと「アニメで出来ること」を探求しているのだろう。常に作品中で新しい表現技法にチャレンジしている。そしてその多くが成功していると言っていいかもしれない。おそるべし新房昭之。そのアグレッシブさには頭が下がる思いだ。この人が監督を務める作品では何かしら新しいワクワクするようなものがある。だから、おたくはこの人が監督している作品は絶対見ちゃうわけだ。


The SoulTaker〜魂狩〜、この作品はこのように非常に多角的な魅力があった。だからこそ、「ナースウィッチ小麦ちゃん マジカルて」といったまた違った流れをつくることも可能だったのであろう。